片想い同盟


……は、なにいまの。


急に現れた慣れない感情に戸惑った。


俺いま、杏相手に、ちょっと色っぽいな……とか思った?



それを慌てて頭の中でかき消して、「一口だけ」とその炭酸ジュースを分けてもらう。


冷たい炭酸が全身に広がるような感覚に、気分がさっぱりした。



……ほら、やっぱり気のせいだ。


こうして当たり前のようにまわし飲みもできる相手に見惚れるだなんてこと、ありえない。



「運動あとに飲む炭酸は美味しいでしょ?」


なぜか自慢げに言ってくる杏に、くすりと笑う。


うん、ない。ありえない。清楚な白石さんとはタイプが違いすぎる。


なんてことを本人に言ったら、きっと怒るを通り越して落ち込みそうだから言わないけど。


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