片想い同盟
「たしかに最高。もうちょいちょーだい」
「あっ、私の分なくなっちゃう!」
取り返そうと伸ばしてくる手を交わして、俺はもう一口だけそれをもらった。
「ん、さんきゅ」
「もう〜っ」
ムッとした杏に、笑って誤魔化しながらペットボトルを返す。
こういう関係が、心地いいんだよな。
……それこそ、白石さんとはまた違うから。
「今日部活ないし、一緒に帰ろ。その足じゃ苦労するだろ」
「……なんか拓海にそう言われると腹立つ」
「いや、うん。それに関しては本当に悪かった。だから責任持って送らせていただきます」
かしこまって言った俺に、杏は吹き出して「冗談だよ」と笑う。
俺に気にさせたくないという杏の気持ちがだだ漏れだったけれど、俺は気づかないふりをしてそのまま彼女を家まで送り届けた。