似非王子と欠陥令嬢
その後確かに夜の海は綺麗であったが朝食も塩辛過ぎる魚に豆のスープ、硬すぎるビスケットと絶望的なメニューのせいでキャロルは船を早く降りたくなっていた。

ビスケットは塩味のスープに浸してふやかしてからでないと岩の様で全く歯が立たない代物であった。

帰りは必ず自分で食料を持ち込んでやろう。

だから昼前に港に着いた時、昼ご飯を船で食べなくても良い事に思わずホッとしてしまった。

「というか船乗りの人達ってあの食事で病気にならないんですかね?」

「なるよ。
だからうちの国では食事指導したり色々船舶に対して支援してそれを防いでるんだけど、この船は他国の持ち物だからね。
利益優先で乗組員達の健康は二の次だから死亡率も高いんだよ。」

「あーやっぱりですか。」

そりゃあの食事では死へ向かって真っ直ぐダイブしているような物だろう。

「でも私達は比較的マシな食事だったんだよ?
ここは港から港への間隔が1日と狭いから新鮮な野菜も一応食べられただろう?
ほらトマトとかさ。
ここより後になると間隔が酷く長いから腐った肉と雨水になったりするんだ。」

想像するだけでおぞましい。

寄港できる港がもっとあれば良いのかとも思うが例え寄港したとしても利益優先で食料を買わなければ意味がないだろう。

なかなか難しい問題である。

キャロルが船乗りの食事事情について考えていると背後が何やら騒がしい。

どうやら何か揉めている様だ。

「もうこの船では充分稼いだわ!
食事も酷いしこの港で降りて街で稼ぎます!」

「いやでも契約では後10日と…。」

「その契約書に私はサインなんてしていないわ!
食料事情もあるから好きな場所で降りて構わないって話だったじゃない!」

見ると昨日の占い師の少女とその仲間が船を降りる降りないで揉めていた。

仲間の半分は食事に対しての不満が爆発しかかっているのか少女に同意し、もう半分は契約がと食い下がっているようだ。

「あの人達が売人だったみたいだね。」

ルシウスはクスクス笑う。

助けに行くべきか悩んでいるレオンの肩を掴んだ。

「あの子はここで降りられるから大丈夫。
船乗り達も食事や航海でずっとイライラしているからね。
あれだけ騒げば出発までに問答無用で船から放り出されるから。
ほら、行こう。」

キャロルはもう一度少女に目をやる。

これは一応ルシウスがあの子を間接的に助けた事になるのだろうか。

キャロルは首を傾げながら歩き始めた。
< 129 / 305 >

この作品をシェア

pagetop