似非王子と欠陥令嬢
半泣きで謝り続けるレオンをルシウスが笑顔で無視しながら馬の元へ辿り着く。

「さて…追いかける前に作戦を立てようか。」

カンテラを地面に置きルシウスが木の根元に腰を下ろし地面に絵を描く。

「…ノア、これはなんですか?」

「何ってマンティコアだよ?」

「へー、マンティコアって犬みたいなやつなんだな。」

地面には中々味のあるヘタレた顔をした犬が描かれていた。

リアムが溜息をついてその横に絵を描く。

全く違う生き物が描かれているのは何故なのか。

「…ありがとうリアム。」

「いえ、お気になさらず。」

ルシウスはごほんと咳をし、リアムの描いた絵を枝で指す。

「マンティコアと戦う時に危険なのはまずこの尻尾。
針山みたいになってて針には毒があるんだよ。
その毒針を尻尾を振って飛ばしてくるんだ。
この毒針が刺さると動けなくなってそのまま生きたまま食べられちゃうから気を付けてね。」

「…まじか。」

「ほんとほんと。
多分新鮮な人肉がお好みなんだろうね?
後危険なのは口。
中にサメみたいな鋸状の歯が3連並んでる。
腕や脚を噛まれたら外そうとせずに即座に切り落とした方が無難だね。
まぁ切り落とした状態で戦って勝てる気がしないなら諦めて食われるのもありだよ。
暴れなきゃ最期に神に祈る時間位は出来るだろうから。」

「…。」

事も無げに言う話にしては重すぎる。

「1対1なら正面からぶつかるのもありだけど今回は群れだからね。
足跡から見るに60弱の群れと見ていいと思う。
1人10~20頭倒さなきゃならないのは面倒臭いしレオンやキャロは実戦は初めてだろうから遠慮したいだろう?」

キャロルとレオンは頷く。

実際戦ってみなければ分からないが、ルシウスの言う通りなら噛み付かれないよう避けつつ毒針の嵐を避けなければならないだろう。

初戦がそれと言うのは少々荷が重い。


2人が不安気に頷くのを見て安心させるようにルシウスが微笑んだ。

「…だろうと思って今回はちょっと卑怯な作戦に出ようと思うんだ。
マンティコアは夜行性だから作戦の下準備を陽が上り次第始めるからね。
作戦の決行は明日の黄昏時。
…死にたくなかったらみんなキリキリ働くんだよ?」

ルシウスの言葉に不穏な何かを感じ早朝に備えて干し肉を齧りながら急いで毛布にくるまったのであった。
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