似非王子と欠陥令嬢
「次お願いしまーす。」

「はいよー。」

上からそう声をかけて熱風で水を蒸発させたクレーターの下にいるリアムに縄を投げる。

リアムにマンティコアの死骸をロープでくくって貰い上まで引き上げる。

身体強化が使える為泥水が付着し重さを増したマンティコアを引き上げるのはキャロルの役目になった。

引き上げたマンティコアをレオンに渡す。

レオンも泥まみれになりながら討伐証明の鼻と武器の材料として重宝される犬歯を短剣で削ぎ落として皮袋に入れていく。

作業の終わった死骸をルシウスが担ぎ火に投げ込む。

時折燃え切った死骸から魔石が火の外に飛び出てくるので集めておく。

これを約50頭分。

雌と子供はリアムがやってくれていたとはいえこの量に溜息をついてしまうのは仕方ないだろう。

「…てか俺気が付いたんだけどさ。」

28体目のマンティコアを運んできたキャロルにレオンが話しかける。

「何を?」

「…この作業まだゴブリンの方も残ってんだよな、って。」

固まったキャロルに死骸を受け取りに来たルシウスが笑いかける。

「大丈夫だよ。
ゴブリンは耳を削いで燃やすだけだから。
数もこれより少ないし何より軽い。
…ただまあかなり臭いけどね。」

その言葉にレオンとキャロルは深い溜息をついたのだった。


最後の1頭が終わる頃にはとっくに陽が落ち切っていた。

時計がないので分からないが星の位置からして恐らく深夜であろう。

疲労困憊ですぐに眠りたかったがルシウスに却下され今4人は馬に跨っていた。

どうせゴブリンの作業をしたら服を捨てなきゃいけないから2枚無駄になる前に汚れているこのままやってしまおうと。

会話をする余裕もないキャロルとレオンと違い遠征慣れしているルシウスとリアムの顔からは疲労等伺えない。

「そう言えば思ったんですが。」

「ん?
何だい?」

「受注した依頼って『マンティコアの群れの討伐と毒針の採取 』でしたよね?
毒液が麻酔として重宝されるので依頼内容に含まれていたと予想出来るんですが、今回全て折って針のみになってますよね。
…依頼達成になるんでしょうか?」

「…毒液込みなんて書いてなかったからね。
達成じゃないなんて言わせないよ。」

あっこれ最悪脅すつもりだとリアムは気付き気にする事を放棄した。
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