似非王子と欠陥令嬢
「まあ概ね事実ですね。」

あれからルシウスはどうしても気になりもう一度会って欲しいと面談を申し出た。

現れたキャロルは前回の様に羊皮紙の束を抱えてはいたが納品が終わった直後だからと前回の様に血走った目でペンを走らせたりはしていない。

今は新しい魔道具を作っているらしく構想段階だからと魔法陣について纏めた資料をパラパラと捲りながらしばし考え込んでいる。

そんな彼女に恐る恐る言葉を選びながら噂を聞いたんだが…と聞くとキャロルは資料に目をやったまま答えたのだ。

概ね事実だ、と。

レオンは背を向けて肩を震わせているしリアムも噂は聞いていたのか目を見開いて硬直している。

「えっと…概ねって事は間違ってる部分もあるって事?」

「はい。」

「どこが間違ってるのか教えてくれないかい?」

頼むからテロリストや殺人未遂の部分であって欲しい。

そう考えているルシウスの方に漸くあの死んだ魚の目を向けるとキャロルは答えた。

「そうですね…まずウィルス爆弾ではなく花火です。
人が最も集合した時が良かったので年越しの花火に混ぜようとしたというのが事実です。」

悪化した。

まさかの最悪だと思われた噂が悪化した。

「後剣で首を落とそうとしたと仰いましたが、私も新しい服でしたし汚れたくないので本人に剣を持たせ自分で首を切るよう魔道具を使って動かしたという所。」

やっぱり悪化した。

しかも生徒の首より服の心配をしてやがった。

「あとはそうですね、顔を憎悪の対象じゃなきゃ覚えないって事はないですよ。
20回位会えば流石に私も顔くらい覚えられます。」

「…因みに私の名前は覚えているかい?」

勇気を振り絞って聞いてみたが道端に干からびているミミズを見るような目で見られ撃沈する。

「…まあ大丈夫です。
この前王命とか言う糞拭く紙にもならない手紙のせいで納期1日前に呼び出しを食らうという記憶のお陰で殿下の顔は覚えましたから。」

…もしかして憎悪の対象になってしまっているんじゃないだろうか。

謝罪しないと命の危険を感じる。

「その件に関しては本当にすまなかったね。
私自身父上の命令で逆らえなくて。」

「そうですか。
国王陛下が原因でしたか。」

「あっいや待って。
殺しちゃダメだよ?
大丈夫だよね?」

恐ろしい予感は当たっていたらしく一瞬眉間に皺がよった。
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