お試しから始まる恋
「ごめん。・・・ずっと、高校の時から気になっていたんだ。忘れられなくて、誰とも交際できないままだった。本当に、試しでいいから。付き合ってみて欲しい」

 とても真剣な眼差しで見つめられ、冬子は震えながらも颯を見つめた。


「・・・わ、私なんか・・・」


 ぎゅっと、肩を抱いて身を縮める冬子・・・。


「俺がそうしたいんだ。ダメなのか? 今のお前で構わないから・・・」


 自分を否定する冬子。

 でも、そんな冬子に颯は優しい声をかけてくれる。

 
 嬉しいけど…だめだよ…

 頭が混乱してきた冬子は、フラっと、倒れそうになった。


 倒れそうになった冬子を、颯が抱きとめてくれた。

「大丈夫か? 」

 抱きとめた冬子は、とても青白い顔をしていた。

 そんな冬子を見ると、颯の胸はキュンとなった。


「ごめん、驚かせて。送って行くよ」

「いいえ・・・大丈夫です・・・」

「いいか、黙って着いて来い」


 倒れそうな冬子を支えながら、颯は歩き出した。



 近くに止めてあった車に冬子を乗せ、走り出す颯。


 冬子は真っ青な顔をして、虚ろな目をしている。


「家はどこなんだ? 」

 聞かれても冬子は何も答えない。

「家の近くで構わない、教えてくれないか? 」

 
 ギュッと口元を引き寄せて、冬子は何も答えようとしない。

 困ってしまった颯だが、そのまま車を走らせていた。


 しばらく沈黙が続くと、いつのまにか冬子は眠ってしまった。


 迷った颯だが、とりあえず自分の家に連れてゆく事にした。

 


 

 総有市の外れにある高級マンション。

 ここの最上階に疾風は1人で暮らしている。



 3LDKで1人暮らしには広い一室である。


 冬子は、あのままぐっすりと眠ってしまった。


 眠っている冬子を抱きかかえてみると、見かけよりずっと軽くて颯は驚いた。

 
 駐車場からエレベーターで、家の前まで登ってゆき、家の中に入ると、颯は自分のベッドに冬子を寝かせた。
 




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