きっともう好きじゃない。


カーテンを閉め切った部屋でパソコンのキーボードを叩く。


パソコンの画面に一文字に刻まれた傷が邪魔で仕方がない。

最近買い替えたキーボードは、キーの大きさが違うせいでたまにミスタイプをする。


どうせなら丸っと全部買い替えたかったんだけど、そんなお金はどこにもなかった。

キーボードだって、型落ち品のそんなに良くないやつを選んだくらいなのに。


一心に文字を打っていたけど、ふと顔を上げて壁にかかる時計を見やる。

随分と長く暗闇にいるのに、パソコン画面が明るいせいで全然目が慣れてくれない。

じいっと目を細めて時計を睨みつけていると、背後でドアが開く音が聞こえた。

それから、廊下からの光が足元に伸びる。


「和華、暗くなったら電気つけろって言ってるだろ」


「電気はまおちゃんの担当だもん」


「なんだよ、担当って」


ビニール袋をガサガサ鳴らしながら近付いてきたまおちゃんがわたしの肩からにょきっと首を伸ばして、パソコン画面を覗く。

わたしはその間にまおちゃんの持つビニール袋の中を覗こうとするけど、すぐにバレて額を小突かれた。


「俺のだから」


「お菓子?」


「んー」


気のない返事。

わたしとまおちゃんは好みが真逆で、たとえばわたしはチョコレートが好きだけど、まおちゃんはスナック菓子が好き。

飲み物なら、紅茶と炭酸。


ちらっとだけ見えたビニール袋の中身は、スナック菓子と炭酸の他に、チョコレートと紅茶も入ってた。


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