闇に溺れた天使にキスを。






まるで抱き枕のように、きつく抱きしめられている。
それも建物の中ではなく、外で。


「未央、このバカ未央。
俺がどれだけ心配したか…無事でよかった未央!」


まるで数日間行方不明だった相手と、久しぶりに再会したかのような言い方をするのは他でもない、私のお兄ちゃんである。


あれから、私は最寄りのひとつ手前で降ろしてもらい。

一駅分だけ電車に乗って降りると、改札近くにお兄ちゃんが待機していたのだ。


やっぱりよかった。
ひとつ前の駅で降ろしてもらって。

そうでなければ、今頃誤解が生んでお兄ちゃんがすごいことになっていただろう。


歯止めが効かなくなる場合だってある。
そこまで心配する必要がないというのに。


お兄ちゃんは私の恋愛のことも深く聞いてくるのだ。
もちろん恋なんて、今までで一度もしたことがない。

小さい頃。気になるかも、という人はいたかもしれないけれど、本気で恋をしたことはなかった。

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