闇に溺れた天使にキスを。
「男経験がないから、未央には難しいだろうね。
そのうちわかるよ、気づけばその人のことばかり考えていたりしたら、それはもう恋って断言していいかも」
やっぱり当てはまる。
神田くんが学校に来ない間も、今日の朝も。
ずっと神田くんのことばかり考えていたから。
「まあ、そこまで焦らなくていいんじゃない?
少なくとも向こうは未央に好意寄せてるだろうし」
「どうしてわかるの?」
「だってひとりが好きなはずの男が女と関わりを持つってね?それも一緒に学校まで登校しちゃって」
これはもう確信だと言い切る沙月ちゃん。
もちろん私はまったくわかっていない。
自分の気持ちにも、全部。
恋かどうかもわからない。
「進展があったらすぐ教えてね」
「う、うん…」
たとえこれが恋だったとしても、進展なんてないけれど。
あるとしたら彼の秘密を知ってしまい、逃げられなくなったことぐらい。
もちろん言えるはずがない。
沙月ちゃんに言ってしまえば私の命は終わりだ。
「ふたりが付き合ったら、校内一のカップル成立でいけるね」
「校内一なのは神田くんだけだよ」
「そろそろ認めればいいのに」
そんなことできるはずがない。
ただでさえ、自分に自信がないというのに。
結局その後も1限目が始まるまでの間、私は沙月ちゃんと恋愛のことを中心に話をしていた。