アナログ恋愛


「おはよう。」


朝起きて1番に挨拶するのは、
お母さんでも、
仏壇のお父さんでもなく、
プーさんになった。


『こないだ取ったんだけど、俺いらないから。おまえにやるよ。』


あの日から、4日。
あっという間に、1週間が終わろうとしていた。






特に変わったことはない。

朝、急いで家を出て、
うとうとしながら授業を受けて、
時々、こっそりプリントやって(主に おじいちゃんの授業【=古文】)
休み時間もプリントやって、
放課後は、リハに出たり、打ち合わせに出たり。


小野チャンへ抱くこの感情の名前も、わからないまま。


――変わったこと言えば、リハや打ち合わせが4時から始まることが多くて、松谷先輩と過ごす時間が少し増えたぐらい。
そのせいで、授業中と休み時間でプリントを終わらせるようになったから、あれっきり『付箋の人』も現れていない。

『あれっきり』というのは、実はあの小野チャンに送ってもらった日のことだ。
その翌日、1限目を受けている途中で なにげなくペンケースを見たあたしは、蓋の裏に貼っていた付箋が1枚増えていることに気付いた。



『がんばって』

『ちゃんと寝て、疲れをとること!!』

と並んで、

『おつかれさま』



あの日はプリントができてから寝てしまっていたから、プリントには貼らなかったのだろう。
ただ、書いた人物については、依然としてわからないまま。



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