妄想から始まる恋
なのに…
今日の私は、集中して人が入ってきたことに気が付かなかった…。
「櫻井さん?何書いてるの?」
すぐ後ろから突然声がして、サッとノートが目の前から消えた。
「ぅわ!!ちょっ!返してください!」
振り向くと、そこには渡辺さんが居た。
やばい…
今、私、渡辺さんのことを書いていた…
それに、真面目で恋愛なんか1番興味なさそうな人に知られてしまった。
身長差があり、私が手を伸ばしてもノートには届かなかった。
「ん…?俺?」
完璧、引かれた…。
渡辺さんは、私が届かないのをいいことに、開いていたページを読んでしまった。
それに、職場でなにしてんだって怒られる…
「ふーん…。櫻井さん、ちょっとここ座って。」
怒られると思っていたのに、返ってきた言葉は違うものだった。
「えっ?」
渡辺さんが指しているのは、私のデスクの上。
今座っているのは、椅子。
「ほら、早く。」
急かされて、されるがままの私はデスクの上に座っていた。