インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
何事かと驚き尚史の方を見ると、思っていた以上に近い場所に尚史の顔があって、私は思わず息を止めてのけぞってしまう。

「な、な、何事か?!」

「だってほら……周りもみんなそうしてるから」

「だからって……!」

あわてて顔をそむけたその先では、カップルが人目もはばからずキスをしていた。

尚史はさらに顔を近付ける。

まさか……あれも真似するつもりじゃないよね?

「尚史……ちょっと待って、一旦落ち着こう?私、いくらなんでもあんなことまでは……!」

「モモはさぁ……八坂さんとデートして、もしキスされそうになったらどうすんの?」

「そっ、それは……逃げないで受け入れようと思ってるよ」

「ふーん……八坂さんのこと好きでもないのに?」

私はもし八坂さんにキスとかそれ以上のことを求められるようなことがあっても、拒まないつもりでいる。

まだ好きだという感情もないのに順番が違うだろうと言われても、1日も早く結婚するためには手段を選んでいる暇はない。

光子おばあちゃんの体に潜む病魔は、一刻たりとも待ってはくれないのだから。

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