インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
尚史との特訓の成果が出れば、八坂さんとだって大丈夫なはず。

せっかく誘ってもらっても楽しくなさそうな顔をしていたら、次のお誘いはもうないかも知れない。

今日は胃薬に頼ってなんとか乗りきろう。


仕事が終わってすぐに胃薬を飲み、『絶対大丈夫』『私はやればできる』と心の中で何度もくりかえし呟きながら帰り支度をした。

鞄を持って席を立ち、ギクシャクと音がしそうなほどのぎこちない足取りでオフィスを出ようとすると、出入り口の付近にいた谷口さんが「お疲れ様です」と声をかけてきた。

「夏目先輩、私決めました!」

「……何を?」

「中森さんにアタックします!ガンガン攻めて攻めて攻めまくって、絶対に中森さんをゲットします!」

『ゲットします!』って、尚史はモンスターをコレクションするゲームのキャラじゃないんだけど。

鋼のメンタルの持ち主の谷口さんは、常に『ガンガンいこうぜ!』モードのようだ。

尚史の性格を考えると、あまりにも激しく攻め込まれたら、おそらくドン引きして『逃げる』一択だと思う。

「あんまり攻めすぎると、相手はビックリして引くんじゃないかなぁ……」

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