インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
「そんなことありませんよ!最初はそうだとしても、好きって言われ続けると根負けすると思います!指くわえて待っててもなんにも始まりませんからね、まずは気持ちを伝えないと!」

谷口さんは『恋の達人』と言うよりは、くじけることを知らない『恋の戦士』だなと思う。

こういう人がパーティーに一人いたら、強敵を前にくじけそうになっても、明るく笑ってみんなの背中をグイグイ押してくれそうな気がする。

積極的で前向きで、自信に溢れた谷口さんがうらやましい。

「あやかりたいなぁ……」

「何にです?」

「いやいや、こっちの話。じゃあ私はこれで」

「はい、お疲れ様でした」

オフィスを出てエレベーターを待ちながら、谷口さんの『待っていても何も始まらない』という言葉を思い出してため息がもれた。

結婚すると意気込んでみても、私は常に受け身になって事態が好転するのを待つばかりだ。

まだ八坂さんとお付き合いができると確定しているわけでもないし、他に候補もいないのだから、八坂さんからのお誘いを待つだけでなく、谷口さんを見習って私からお付き合いを申し込んだ方がいいのかも知れない。

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