インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
フレンチとの闘いに必死ですっかり忘れていたけれど、そういえば私は今日、お付き合いをOKするつもりで来たんだった。

私から切り出すべきなのか、八坂さんが話を振ってくるのを待つべきか。

私から切り出すにはタイミングをはかるのが難しい。

「じゃあ俺んちに行こうか」

「えっ?ああ、はい……」

本当は食事だけですっかり疲れて帰りたくてたまらないけど、八坂さんの部屋で一緒にワインを飲む約束をしてしまったし、ここで帰るわけにはいかない。

八坂さんの部屋に一歩足を踏み入れたら、そこからは何があっても自己責任だ。

私もそろそろ覚悟を決めなくては。

レストランから少し歩いたところでタクシーに乗り、八坂さんの家へ向かった。

後部座席で八坂さんと肩を並べていることに強い違和感を覚える。

八坂さんは距離感が近い人なのか、私との距離がやけに近い。

今にも肩や足が触れそうな近さだ。

私は無意識に身を守ろうとしたのか、膝の上に置いた鞄をしっかりと両手で抱え込んで身を縮めていた。

それから5分ほどでマンションに到着してタクシーを降り、とうとう八坂さんの部屋に足を踏み入れた。

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