インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
「片付いてるって言うよりはあんまり物がないだけだよ。普段生活してる部屋は別にあるんだけど会社からちょっと遠くてね、ここは終電逃したときとか次の日の朝が早いときなんかに使ってる部屋なんだ。じゃあ俺はワインを用意するから、モモちゃんはゆっくりしてて」

そう言って八坂さんは私の肩をポンと叩いた。

ほんの少し肩に触れられただけで私の肩は大きく跳ね上がり、心臓は異様な速さでドクドクと脈打って、小刻みに手が震えている。

この震えをなんとか鎮めようと、ソファーに腰を下ろして両手を強く握りしめた。

落ち着け、私。

こんなことくらいで怯んでどうする!

八坂さんとのデートのために、あんなにも尚史と特訓したじゃないか。

尚史とは手を繋いだり抱きしめられたり頬擦りされたり、おまけに本当にキスまでしたけど、気持ち悪くなったり突き飛ばしたり殴ったりはしなかった。

尚史だって八坂さんと同じ男なんだから、尚史とできたことを八坂さんとできないわけがない。

だからきっと大丈夫、なんとかなる……はず。

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