インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
いつもすぐそばにいるんだから好きなら好きと言えばいいのにとか、どうして自分をどう思っているのか直接相手に聞かないのだろうとずっと思っていたけど、そばにいるからこそなかなか踏み込めない領域があるのだと、今ならなんとなく理解できる。

そしてアンナちゃんが親友だと思っていた翔くんへの恋心に気付くきっかけとなる出来事が起こる少し手前辺りで急に睡魔に襲われ、いつの間にか眠ってしまった。

読み散らかした漫画を本棚にしまい、顔を洗って朝食を取ろうとダイニングへ行くと、父は急な仕事が入ったらしくちょうど出掛けるところだった。

席についてコーヒーを飲みながらテレビの天気予報を見ていると、母がこんがり焼けたトーストとハムエッグが乗ったお皿を私に差し出す。

「今日はデートなんだっけ?」

……そうだった。

火曜日の晩に母から婚活はどうなっているのかと聞かれて、ちょっといい感じになっている人がいて土曜日にデートする予定だと話したんだった。

「その予定はなくなったから、今日は尚史と一緒に光子おばあちゃんのお見舞いに行く」

「あら?お付き合いするかもって言ってたのに、もうフラれたの?」

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