インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
『朝目が覚めたら隣にあのイケメンがいる毎日ですよ、最高じゃないですか!』と興奮気味に言っていた谷口さんの気持ちが、少しだけわかった気がする。

確かに目の保養には最高だし、この無防備な姿はヤバすぎるくらい萌える。

だけどこのイケメンの寝顔や寝起きの顔を見られるのも、この形の良い唇が『好きだよ』と言ってキスするのも、妻である私だけなのだと思うと、ちょっとした優越感でニヤニヤが止まらない。

そんなことを考えながら、尚史の寝顔を穴が空くほど眺めていると、尚史が微かに眉を寄せて「うーん」と小さく唸った。

まずい、今この状態で尚史が目覚めたら、私のだらしなくにやけた顔を見られてしまう。

それに尚史の寝顔に見とれていたなんて知られたら照れくさいなと思い、腕の中からそっと抜け出そうとすると、眠っているはずの尚史が両腕で私の体をガシッと捕まえた。

「……逃がさん……モモ……」

今、私の名前を呼んだよね?

もしかして起きてた?

「……ンガ……捕獲……」

モモンガかよ!

夢の中でも私を逃がさないなんて可愛いなぁと、ちょっとキュンとしてたのに!

なんてまぎらわしい寝言だ!

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