インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
「あー……緊張して体に力が入ってたもんな、初めてだったから痛かったと思うし」

尚史にそう言われてやっと、この体のだるさの原因がわかった。

そうだった……。

ゆうべ私は、生まれて初めての経験を尚史としたんだ。

好きな人と初体験した翌朝は全身筋肉痛だなんて、色気なさ過ぎじゃないか?

恋愛小説なんかで読んだことのある後朝(きぬぎぬ)(おもむき)にはほど遠い。

「それとも、俺そんなに激しかった?モモ、めっちゃ乱れてたし」

「うるさい、黙って早よ起きろ」

平日の朝は忙しいんだから、ゆうべの甘い余韻に浸っている時間もなければ、もちろん尚史のエロトークに付き合う余裕などあるわけがない。

急いで身支度を整えて簡単な朝食を済ませ、戸締まりをして二人一緒に家を出ようとすると、尚史は私の腰を抱き寄せる。

「行ってきますのキスは?」

「キスならさっきも……」

私が『さっきもした』とまだ言い終わらないうちに、尚史は私の唇を唇でふさいで言葉を遮る。

「あれはおはようのキス。これは行ってきますのキス」

「……朝からそんなにするの?」

「帰るまではできないからな」

そう言って尚史はもう一度キスをした。

< 615 / 732 >

この作品をシェア

pagetop