インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
「着替えは?」

「あー……面倒だから脱ぐだけでいいや」

尚史は起き上がってネクタイをはずし、指先で眼球を摘まんで何かをごみ箱に捨てた。

「ねぇっ!今、眼球つまんだ?!」

「ああ、使い捨てコンタクトだよ。いちいちケアすんの面倒だから」

「なんだ、コンタクトか……。そんな風に外すんだね、初めて見たからビックリしたよ」

私が興奮気味にそう言うと、尚史はおかしそうに笑いながらジャケットのポケットからスマホを取り出してベッドサイドに置き、着ていたスーツを脱いで床に放り投げ、またベッドに入って私の隣で横になった。

「それにしても『眼球つまんだ』って……モモは面白いこと言うよな」

「だってそう見えたんだもん」

私は尚史の体にしがみついて、胸に頬をすり寄せる。

帰りを待ち遠しく思っていた分だけ余計に、尚史の匂いや体温が心地よく感じる。

「俺、汗臭くない?」

「全然臭くないけど、尚史の匂いがする」

尚史は少し首をかしげて、自分の肩の辺りに鼻を近付ける。

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