世界No.1の総長と一輪の花
「花莉!!!!」
後ろからは詩優の声。パシっと手首を掴まれた。
後ろを振り向くと、少し息切れしている詩優。走ってきてくれたみたいだ。
ブレザーを着ていない詩優は、自分のワイシャツの袖で私の頬をごしごし拭く。
冬樹くんにキスされたところ……
「……何赤くなってんだよ」
詩優の不機嫌そうな声。
未だに熱い頬。その熱は冷めなくて、詩優は私に顔を近づけてキス…するかと思ったら直前で止めた。
……な、んで…
「…帰ろ」
手を引いてそのまま歩く。私はただ足を動かして、涙がぽろりと溢れたのを隠そうと必死だった。
裏門付近に止めてあった康さんの車に今日は詩優と2人で乗り込んだ。
詩優は本当に私にキスできなくなっていたんだ。キスしたくないんだ。
そう思ったら涙が次々に溢れてきて、詩優にバレないように窓の外を眺めていた。