W Love ダブルラブ~イケメン双子に翻弄されて~
マンションから会社まで車で15分ほど。
梗月の車を静香が運転して今日も同伴出勤。
助手席でタブレットを見ていて既に仕事モードの梗月のキリッとした横顔をチラリと見ながら駐車場に入る。これが毎日の日課。
最初は先輩やら同僚やら女性陣からやっかみや嫌味もあったけど、今は毎日の光景に慣れたのか、はたまた2年も同伴してても何の進展もない二人に安心したのかほとんど何の反応もない。
嫌味を言われるのは嫌だけど、社長ファンの人たちに「新村さんは社長の傍に居ても安全」なんて言われるとへこむ。

私も一応恋する女なんですけど!?
こんな素敵な人が傍にいたら恋しないわけがないでしょ?

不満に思いながらも、静香は仕事と恋は別物と自分に言い聞かせ、自分の気持ちを隠してきたつもりだ。
それに、からかわれることはあっても甘い雰囲気になったことは今まで無い。
梗月も静香の事は女として意識していないだろう。
哀しいことに・・・。

すれ違う社員たちに挨拶をしながらエレベーターで最上階へ。
通販会社であるこの社屋は倉庫も隣接している6階建てで、倉庫勤務が7割、オフィス勤務が3割の総勢150名ほどが働いている、小規模会社だけど売り上げは上々。前は苦戦してたけど梗月が来てから売り上げは鰻登り。次々新企画を成功させている。

社長室に入ってすぐのデスクが静香の持ち場。その奥に社長室がある。
一緒に社長室に入り、今日の予定の確認をし、コーヒーを用意してから社長室を出る。
デスクに座り、パソコンを立ち上げメールの確認をしていると、コンコンコンと来客が来たことを知らせる音。
「どうぞ」と声をかけると、扉が開き、前澤副社長が顔を出した。

「前澤副社長、おはようございます」

立って丁寧に礼をして出迎える。
前澤副社長はちょっとふくよかなお腹、ロマンスグレーの髪に優しそうな目をした52歳。気さくで、梗月とも仲が良く、引きこもりがちな梗月をよく飲みに連れ出している。
本社からの執行で来て1年になろうとしていた。

「おはよう新村さん。梗月君はいる?」

「はいおります、どうぞ。コーヒーお飲みになりますか?」

「いや、要件がすんだらすぐ行くよ。新村君も一緒に来て」

「かしこまりました」

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