W Love ダブルラブ~イケメン双子に翻弄されて~
ノックをし、社長室に入るとデスクでコーヒーを飲みながら真剣な顔で書類を見ていた梗月。

「前澤さん、おはようございます。どうしました?」

「梗月君、おはよう。来週本社から定期監査が入るんだが聞いているか?」

年に一度、適切な経営がなされているか、不正はないか、調査をするために本社の人間が数日にかけて監査を行う。
それが近々行われるようだ。

「ええ、今ちょうど書類を見てたところです」

書類をひらひらさせて困った顔をしている。

「涼月君も来るようだね」

「そう、みたいですね…」

りょうげつ…確か、本社で専務をしているという梗月の双子の兄。
静香はまだ会ったことが無い。

「色々、複雑な心境だと思うが大丈夫か?」

前澤副社長は何を心配してるのだろう?
兄の涼月と何かあるのだろうか?

「まあ、仕事で来るので、問題はないと思いますが…」

なんとなく梗月を見つめていると目が合ってドキッとした。
瞬きをしながらも目が離せないでいると、ふっと梗月の方が目を逸らす。

「大丈夫ならいいんだが…。新村さん」

「は、はい!」

後ろに控えていた静香に振り向き手招きするので前澤副社長の横へ移動した。

「来週からの監査、いつものようにサポート頼むよ。それと、梗月くんも頼む」

「はい。…は?」

監査が来たときの対応は総務でやるが社長室も関係があるので静香もサポートに入っていた。
けど梗月も頼むとは?

「しばらく梗月くん情緒不安定になりそうだから、新村さん気をつけてやって?」

「はあ…」

何のコトだかさっぱりわからず生返事をしてしまう。
静香は目をぱちくりさせて梗月と前澤副社長の顔を交互に見ていた。

「前澤さん止めてくださいよ、情緒不安定だなんて。静香くんが困ってます。」

眉をはの字にして困ってるのは梗月の方。
気になって聞いてみる。

「あの、何があるんでしょう?」

「静香くん、なんでもないよ気にしないで。もう戻っていいよ」

顔は笑っているけど、有無も言わせぬオーラを出し静香を追い出そうとする。
困って前澤副社長を見ると苦笑いをして頷いた。
もう何を聞いても答えてくれないだろうと諦め、失礼しますと言って二人を残し社長室を出た。

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