W Love ダブルラブ~イケメン双子に翻弄されて~
「子供の頃からお前たちは奈津子ちゃんの事が大好きだったじゃないか。二人とも初恋は奈津子ちゃんだろ?アメリカに行ってた頃は付き合ってたって言うし…。向こうで何があったかは前澤に聞いてはいるが、今でも好きなんだろ?」

ゆっくりとワインの香りを楽しみながら話す春月はまるで涼月の様子を確かめているよう。

「な、何言ってんだよ!俺はもう奈津子の事は何とも思っちゃいない!それを言うなら梗月の方だろ?」

焦っている涼月は声を荒げ、すみれに窘められる。

「涼ちゃん!落ち着いて。静香さんごめんなさいね?こんな話聞かせて」

「い、いえ」

梗月の初恋…こんなところで聞かされるとは思いもよらずショックを受ける。

「そうか、なら、梗月と奈津子ちゃんが結婚することになるかな?梗月は結婚しないだなんて言ってるようだがそれは認めない。」

「え…」

思わず小さな声を出してしまって、また俯く。
梗月と奈津子が結婚…。恐れていたことが現実になりそうで顔面蒼白になっていた。

「静香ちゃん?顔が青いよ、気分悪い?ごめん、変な話聞かせて。もう帰ろう」

「い、いえ、私は大丈夫です…」

椅子を引かれ腕を取られて立たされると肩を抱かれ入口へと向かう。

「あ、あの」

引きとめて後ろを振り向くとすみれがその場で立っていた。

「ごめんなさいね静香さん。ほんとに顔色が悪いわ。早く休んで。また、お話ししましょう」

「すいません。失礼いたします」

優しく言われ、丁寧に頭を下げ、また涼月に肩を抱かれ出ていった。
その後春月とすみれが顔を見合わせ何か話をしていることを静香達は知らない。

そういえばおいしそうな料理が並んでいたのに結局一口も食べずに出てきてしまった。
でも、あんな話を聞いて食べる気にもなれず、涼月の家へ戻ると、何か食べる?と聞かれて頭を振った。

「静香ちゃん、今日はごめん。あんな話を聞かせるために親父に会ったわけじゃないのに…」

「いいえ、いいんです。涼月さん、涼月さんたちの子供の頃の事教えてください。奈津子さんの事も…」

なんとなく、聞いてみたかった。
梗月には子供の頃の話なんて聞いたことなかったし、奈津子とのことも、初恋や付き合ってた話を聞いて、自分なりに自分の心の整理をしたいと思った。

「え?あんま面白い話はないけど…、聞いてて辛くならない?奈津子の話なんて聞いて」

「むしろ知りたいんです。教えてください。初恋の話も」

上目づかいで訴えると、ごくっと喉を鳴らした涼月にソファーに誘われ、隣同士に座って、ふうっと息を吐きゆっくり語り出した。
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