W Love ダブルラブ~イケメン双子に翻弄されて~
先ほどの明るい雰囲気から一転、威厳のある声で梗月を促す総裁。
梗月は居住まいを正し、総裁を真っ直ぐ見つめる。

「ここにいる新村静香さんは2年前から僕の秘書をしてもらってます。僕はずっと好意を寄せていました」

総裁から静香に目を移すと微かに微笑んだ梗月はまた総裁を見る。

「だけど、涼月が静香を気にいってしまい結婚すると言い出した。」

今度は涼月と真正面からにらみ合う。

「僕は涼月に酷い仕打ちをして奈津子と別れさせてしまった過去があるから負い目があった。だから本気で静香のことを好きなら僕は諦めて二人を祝福しなければならないと思いました。」

ふっと下向き膝の上の握り拳を見つめ、ぐっと拳に力を込めた。

「だけど、諦めることなんてできなかった。僕は静香を本気で愛しています。たとえまた涼月を傷つけても静香を奪い返したかった!」

最後は涼月を見つめたまま叫びにも似た言葉が吐き出された。
真意を見極めるように目を細め梗月を見据える総裁。
涼月はソファーにふんぞり返り腕を組む。

「ふん、お前が本気とか片腹痛いな」

「…本気を誤魔化して逃げるお前に言われたくない」

「はあ?」

また睨み合う二人の剣呑な空気に堪らず梗月の腕を握った。
奈津子も止めるように涼月の腕を取る。

「やめないか、二人とも」

春月に窘められ、前のめりにしていた二人は息を吐きソファーに背を預ける。

「それで?涼月は?」

今度は涼月を見極めるように目を細め見る総裁に、涼月は目も合わせずそっぽを向きため息をついて話出した。

「静香ちゃんの事は、最初は梗を挑発するために近づいた。あの時以来、俺が彼女を横取りしても平気なふりをしてる梗の本気の顔を見たかった。」

静香が涼月を驚きの思いで見つめる。
何かとちょっかい出してきたのはそのためか…。あの時以来…と言うのは、初めての彼女の事だろうか。
梗月の事が気になり恐る恐る横顔を見ると、鋭い目線を涼月に投げつけている。

「梗は全てを諦めて結婚しないと言いだすからムカついて、俺が静香ちゃんと結婚すると言ったんだ。このまま静香ちゃんと結婚してもいいと思ってた」

涼月が挑むような目で梗月を睨み返した。
横でチッと小さく舌打ちが聞こえる。

「俺は……梗に騙されたとは言え奈津子のことが信じられ無かった…だけど、奈津子がまた現れて、俺の中で折り合いをつけていた感情が表に出てきた。」

「涼ちゃん…」

泣きそうな表情で涼月の横顔を見つめる奈津子。

「昨日、父さんに窘められて奈津子と一晩中話し合った。俺は、やっぱり奈津子の事が忘れられなかったと気づいたよ…。静香ちゃん」

名前を呼ばれ、ゆっくりと涼月さんと目線を合わした。

「梗月の本気を知りたかったとは言え、静香ちゃんを巻き込んで辛い想いをさせてしまった。申し訳ないと思ってる。ごめん…」

「…いえ…」

頭を下げる涼月にゆっくりと頭を振る。
手が温かいものに包まれ視線を落とすと梗月に手を握られていた。
顔を上げると、梗月まで申し訳ないような顔で見つめてきた。
静香はかすかにはにかみながら見つめ返す。


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