W Love ダブルラブ~イケメン双子に翻弄されて~
素直に従い玄関に入ると突然ふわりと後ろから抱き締められた。

「りょ、涼月さん?」

腕にぐっと力が込められ肩に顔が埋められる。
驚き動けずにいたけどドキドキと胸が鳴り響くのが涼月にも聞こえてるんじゃないかと思った。

「静香ちゃん、昨日はごめん…君に酷いことをした」

「…いえ、いいんです。私は涼月さんを傷つけたのだから…」

「皆の前で言ったこと半分嘘なんだ」

「え?」

振り向こうとすると余計に力が入り動きを止められた。

「俺は、梗月を挑発するため静香ちゃんに近付いたと言ったけど、本当は純粋に静香ちゃんに興味を持った。静香ちゃんの仕事ぶりを見て、デートして色んな顔を見せる静香ちゃんに俺は……」

腕が緩み後ろに振り向かされると真剣な顔をする涼月。

「本気で静香ちゃんを好きになった。静香ちゃんに想われてる梗に嫉妬した。俺は本当に静香ちゃんと結婚したいと思ったんだよ。」

必死な訴えに何て言っていいのかわからない。
ただ胸の鼓動が打付けるのを抑えるように胸元をぎゅっと握りしめた。
涼月は肩に置かれた手に力が籠り目を逸らし話を続けた。

「だけど、梗に静香ちゃんを連れ去られても、追いかけることが出来なかった。静香ちゃんに言われたことに動揺して動けなかったんだ。気付いたら隣に奈津子が居て…奈津子と色んな話をした。そして蓋をしていた気持ちを思い出したんだ、本気で奈津子を愛してたこと…。」

段々と俯き弱々しくなる声。
それがキッと顔を上げ決意に満ちたような顔になる。

「静香ちゃんには本音を気付かせてくれて感謝してる。だけど本当に振り回して傷つけて酷いことをしたと思ってる。償いをさせてくれ何でもする」

「涼月さん、そんなこといいんです。流された私も悪いですし…」

「でも…!」

何かしないと気が済まないと一歩も引かない体で見つめる目に静香は困り顔で言葉に詰まる。
何とか逡巡し、あることを思いついた。

「そう、ですね…。じゃあ一つ約束してください」

「うん、一つと言わず何個でも!」

食いぎみに返事をする涼月に苦笑い。

「一つでいいんです。涼月さん…」

真剣な涼月に静香も顔を引き締め言った。

「奈津子さんを幸せにして上げてください。私の願いはそれだけです」

「え…それ?」

にっこり笑う静香に拍子抜けしたように肩を落とす涼月にもう一つ付け加えた。

「あ、それと、浮気はダメですよ!奈津子さんを泣かせたら私が黙っていません。何せ義姉妹になるんですから」

まだちゃんと決まってないのに義姉妹って言っちゃった!
奈津子にそう言われたことが思った以上に嬉しかった。

「そ、それはもちろん…。だけどそれだけ?静香ちゃんは何も得しないよ?」

「涼月さんと奈津子さんが幸せでいることが私の幸せです」

「静香ちゃん…君って人は…」

満面の笑みで言い切った静香を困ったように見る涼月。

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