身代わり令嬢に終わらない口づけを
 普段着のように少しゆとりのある服ならお互いに貸し借りできるほどには二人の体形は似ていたが、先日目にしたドレスは、上半身が体の線に沿うようにデザインされていた。

 ローズの方が少しやせていて、ベアトリスよりも女性特有の丸みに乏しい。特に、胸の部分が。ローズに合わせて寸法直しをされては、当日ベアトリスが着られなくなる恐れがある。

 尻込みするローズを、ソフィーは不思議そうに見る。

「普通のドレスとは違います。特別なドレスですもの。当日になって合わないなどという事があれば、あわてて直すのでは大変ですよ。お針子たちが用意しておりますので、どうかおいでください」

「何度も寸法は図ったもの。おそらくそのままで大丈夫よ」

「それでも一度お試しくださいませ。それほどお時間はかかりませんわ。さあ、まいりましょう」

 ソフィーは有無を言わせず、ローズを部屋から連れ出した。
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