ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】
「はいはい、それで、どうなったんだよ?」
坂田が促すと。
「それが!」
怒り心頭で、ラムちゃんはもう一度こぶしを振るう。
「親切心で、『誰に会いたいの』って聞いてあげたんですよ。繰り返しますけど、親切心で!! なのにそいつ、イキナリ走り出して、すれ違いざまにぶつかってあたしが転んで、箱の中身ぶちまけたのに、そのまま逃げていったんですよ!! 信じられなくないですかっ!?」
「いきなり声かけられて、びっくりしたんじゃないか?」
のんびりと丸山主任が言えば、「まぁそうでしょうね」と坂田もすでに興味を失ったようにパソコンへ向かう。
「ひっどぉい。あたしが悪いんですかぁ?」
ラムちゃんだけがむっと口をとがらせて――こっちを見た。
「飛鳥さん? やだ、どうしたんですか? 顔、真っ青ですよ!?」
「……え?」
「おい真杉、ほんとだぞ。お前、ちょっと座れ! 貧血か?」
坂田も丸山主任も、お化けでも見るみたいに、私を凝視してる。
やだな。何言ってんの。
全然平気なのに。眩暈も何もないよ?
「大げさだなぁ。ちょっと、疲れがたまってるだけだから。じゃああの、外回り、行ってきます」
「真杉っ!」
「飛鳥さんっ!」
叫び声を後ろに聞きながら、足早にフロアを抜け――……エレベーターに飛び込んだ。