ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】

「よくぞ聞いてくれましたっ!」

ラムちゃんがぶんっとこぶしを天井に振り上げるもんだから、フロア中の注目が集まった。

「昨日のオオタフーズの仕事、ほら、フェミール池袋だったんですけどね。あたしがこう、撮影に使う荷物をタクシーから下ろして、こうやって、えっちらおっちら中へ運ぼうとしてたら、ですね」

おばあちゃんみたいに背中を曲げ、箱を持つ仕草まで再現しながら、ラムちゃんの熱弁は続く。

「スタジオの入口に、男が立ってたんですよ。ドア、こそーっと開けたりして、中覗き込んでて」

「男って……どんな?」
そういえば昨日、結局その話は最後まで聞けなかったんだっけ。
思い出した私は手を止めて、耳を傾けた。

「野球帽かぶってたんで、あんまよくわかんなかったんですけど、割と若めかなーとは思いましたね」

「若い男ぉ? なんじゃそら」
おもしろそうだと思ったのか、丸山主任までカップ片手にやってきた。

「ほら、たぶんあれですよ。モデルの出待ち! あのスタジオって、よくファッション誌の撮影もやってるから、きっと昨日、推しのモデルちゃんがスタジオにいたんじゃないかな」

ファッション誌の、撮影?

「一目でも会いたいって言うファン心理、よくわかるんですよー。あたしもよくやるから。ウシシ」

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