ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】
――ばかやろうっ怯むな! 迎え撃て!
――忠英(ヂョンイン)! ダメだ、どんどん入ってくるぞ!
――くそっ! 煙が……っ……火炎瓶だ!
――火がっ……火事になるぞ!
――裏から逃げろ! あと何人いる?!
狂ったような、叫び声。
乱れた、足音の群れ。
ドアの外で繰り広げられるその狂騒を、頭のどこかで聞きながら。
ぼくはぺたりと座り込んだまま、ただ小刻みに震え。
こちらへと狙い定めたように近づいてくる、赤いヘビを見つめていた。
チロチロと、蠢きながら……ぼくの方へ。
細長い体躯をたどっていけば……その先にある“もの”へとたどりつく。
ピクリとも動かないそれは、丸々と肥え太った……
「老板(ラオバン)――」
ぼくは、自分が握り締めているものを見下ろした。
初めて手にするそれは、黒々と冷たく光り、ただ恐ろしかった。
あぁそうか。ヘビじゃない。
ヘビじゃなくて……これは、
血だまり。