ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】

……は?

聞き違いかと瞬きを繰り返す私の前で、ガーゼに包まれていない方の口角が、ニッと持ち上がった。

ケガのせいだろうか。
それは、傲慢なほど不敵な笑みに見え――


「僕の気持ちは、変らない。君の心が僕から離れたって言うのなら、全力で取り戻すだけだ」

「と、りもどすって……?」


「必ずもう一度、振り向かせる」


ふ、振り向かせる……?
もう一度って、それって……?

それって……全然意味がないじゃない!

ようやく彼の言わんとするところを理解して、激しく首を振った。

「だ、ダメ。困る、それはっ――」

「不安にさせたことは謝るけど、今の僕はマフィアとは誓って何の関係もない。変えられない過去にこだわって、世界一幸せな花嫁になるチャンスを逃すのは、ナンセンスだと思わない?」

開き直りともとれる口調で言い切った彼が、すっと腕を上げた。
私を囲い込むようにして両脇の壁に手をつき、見下ろしてくる。

「っな、に……?」

吐息の温度すら伝わる至近距離。
心臓がもう、……今にもぶっ壊れそうな音を立ててる。

ダメだ。
この距離は、ダメ……

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