ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】

どくん、どくん、どくん……

もしかして……彼……
別れようって言ったの、生い立ちを黙ってたせいだって思ってる?
それで私の気持ちが離れたって?


「君の決意が固いことも、よくわかったからね。僕はそれを受け入れる。教会の方には、僕からキャンセルを入れておくよ」


冬に逆戻りしたような今日の気温のせいだろうか。
浅い呼吸をなだめながら、冷えた指先を握りこんだ。

誤解には違いないけど……私にとっては好都合だ。
否定したがってる自分へ、一生懸命言い聞かせる。

彼がそう思い込んでくれてるなら、このまま……


複雑な思いを抱えたまま、こくりと機械的に頷いた。

これで終わり。
これでいいんだ。

彼は、新しい道を行く。
私とは違う、道を。


細かく震えだす唇へ力を込め、不格好に上げた。

「あり、ありがとう……今まで、あの、――」



「でも、諦めるつもりはないから」


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