ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】
14. 罠~ライアンside

「新商品の情報、受け取ったよラム。ありがとう」
『はい、じゃああとは田所さんに文章頑張ってって伝えてくださいね』
「わかった――あ、ちょっと待って!」

電話を切ろうとしたラムに、待ったをかけた。
『はい? なんですか?』

「飛鳥に替わってもらえないかな? 明日の撮影の件で、伝えたいことがあるんだけど」
『あぁはい、ちょっと待ってくださいね……飛鳥さーん――』

保留音に切り替わる直前、その向こうに彼女の声が聞こえて、ドキリとした。

電話もラインも、プライベートなコンタクトは相変わらず完全無視を続けている彼女も、仕事がらみならきっと――という僕のプランはあっけなく崩壊した。

『すみません、ライアンさん。あのぅ……ちょっと飛鳥さん、えっと、打ち合わせに行ってまして……伝言でしたらあたし、伝えておきますけど』

洩れかかったため息をぐっと堪えながら、しどろもどろのラムへ気にしないように言い、受話器を戻した。

声、聞こえてたんだけどな。

ベタな嘘をついてまで、飛鳥はとことん、僕を拒み続ける気でいるらしい。
まぁ、振り向かせるって宣言してから3日しか経ってないし、その程度で引く気はないんだけど。

こうもあからさまに避けられると、さすがに切なくなるな。
軽く息を吐いてから、椅子にもたれて目を閉じた。


――だ、ダメ。困る、それはっ……

諦めない、僕がそう言うと。
慌てたように何度も首を振った飛鳥。

でも。
細かく震える唇も、縋り付くような眼差しも。
僕を拒絶しているようには見えなかった。
ただ困惑してるだけ、みたいな――

それは単に僕の……男のエゴだろうか。
未だガーゼが取れない頬へ、手を滑らせながら考えた。
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