ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】

「復旧に3日!?」

顎が落ちるかと思った。
驚きすぎて。

「本当に、申し訳ありません!」

涙すら浮かべて平謝りするスタジオスタッフに、強く言えるわけもなく。
私は頭を抱えてしまった。

なんでも、貯水槽の老朽化が原因で、スタジオ内すべての水道水に不具合が生じているらしい。
業者には連絡したものの、今日中の復旧は不可能、とのことだった。

「どうしよう……」

南波さんが青い顔を手で覆う。

隣のスタジオで予定されてるスチール撮影は予定通り行うってことらしいけど、こっちは料理撮影だ。
水が使えないことには、話にならない。

なんとか対応を考えなくちゃ。

全部の料理に使うだけの水を、外から用意してくるなんて無理だし。
ここは諦めて、別のスタジオを探したほうがいいな。
でも、当日、しかもキッチンつきのスタジオとなると……

私はカバンから携帯を取り出して、樋口さんへと連絡した。


幸いまだ社内にいた彼に、大体の事情を説明する。

「確か、御社の社内に、キッチンスペースがありましたよね?」

社屋を改築し、料理教室を開催できるスペースを作ったって、大河原さんに聞いたことがある。
もしそこが使えれば……

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