ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】

「いらなかったら捨ててくれていい」

私の手にドリンクを押し付けて。


「打ち上げ、楽しみにしてるよ」

少しも言葉通りに受け取れない口調の後、乱暴なドアの開閉音が続いた。

ガチャンッ――


遠ざかっていく足音。
戻ってくる静けさ。


ペコ……
手の中のペットボトルを握り締めて、唇を噛む。


泣かない。
泣くもんか。


彼を傷つける私に、泣く資格なんかない。
だから、泣くわけにはいかない。


ペコペコ……

ねえライアン。

少しぬるくなったペットボトル。
あなたの体温が伝わって、こんなに胸が痛いよ……


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