ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】

「ちょ、え、リーさん!?」

「どういう、意味だ?」
抑えた声に、どうしようもなく殺気がこもる。

誰かに見られるかもとか、冷静になんて考えられなかった。
ただただ、矢倉の言葉が許せなくて。


あの内容は、あれじゃまるで……

「ちょ、ちょっと待っ」
「どういう意味かって、聞いてるんだ」
「っと……もしかして今の、聞こえてた?」
「あぁしっかりね」


――矢倉には、女がいたはずだ。


やっぱり、そうか。そういうことか。
本命の女は別にいて、飛鳥のことは遊びなのか。

「そっか、聞こえてしまったなら、仕方ないな……」

悪びれもせずぽりぽりと頭をかく矢倉に、怒りはあっけなく沸点を超えた。

「ふざけるなっ! 飛鳥を振り回して傷つけて、ただですむと思うなよっ!」

その身体を壁に叩きつけるようにして揺さぶると、矢倉が慌てたように叫んだ。
「ちょ、ちょっと待て! 誤解してるぞ、あんた」
「誤解? 言い訳するつもりかっ!?」
「いやいや、待て。言い訳とかじゃなくて、つまり――」



「きゃあああっ!! 飛鳥さん!!」
「真杉さんっ!!」

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