ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】

「なるほど……つまり、お前が探してほしいっていうのは、その張を名乗ったニセモノ、ひいてはそいつを操る黒幕、ってとこか」

僕は頷く。
「一応、僕が保存している写真データを飛鳥に確認してもらったけど、それらしい人物はいなかった」

しかもそのニセモノは、上海時代の僕のことも承知していたという。
そう告げると、貴志は低く唸りながら腕を組んだ。

「確かに、そんなトップシークレットを知っているとなると……かなり上にいる人間だな。総帥自身がどこまで関知してるかって問題は残るが、とりあえず日本で動ける奴が関わってることは間違いないだろう。例えば……日本に展開してるグループ会社で、リーズコーポレーションの取締役と兼務してる奴が何人かいるよな」

それは僕も考えたことだったから、すぐに名前を挙げることができた。

「リーズコーポレーションの日本法人・リーズニッポンの最上悦子(もがみえつこ)社長。リーズメディカルの畑中栄吉(はたなかえいきち)社長と、リーズホテルズジャパンの李偉平(リー・ウェイピン)社長。この3人だ」

「その中の誰かが関わってる、って可能性は高いな」
「僕もそう思う」
「最上悦子は……どうかな、最近体調崩して、表にあんまり出てこないだろう」
「知ってる。けど、例外は作りたくないから」

きっぱり言うと、貴志は諦めたように頷いた。
「了解した。あとは……野球帽の若い男、っていうやつも気になるよな。何者だろう」
「飛鳥は、SDのメンバーだと思ってたらしいんだけど……」

僕たちは顔を見合わせ、お互いに「知らないな」、と首を振る。

SDに所属していても、その全メンバーを承知してるわけじゃない。
ミーティングで顔を合わせるのは、そのミッションに関わる人間だけだったから。

「全員を把握してるのは、キングとジェネラル……ナンバー1、2コンビだけだろ。この際キングに事情話して、協力してもらえば早いんじゃないか?」

「無駄だと思う。彼は僕を嫌ってるからね。関わりたくないって言うよ」

研ぎたての刃物のように怜悧な、あの瞳を思い浮かべる。
彼とは、どうも昔から相性が良くないんだ。
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