ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】
「嫌われてるって……もしかしてあの噂、本当なのか? キングの女にお前が手を出したとかって」
身を乗り出した貴志に、曖昧に肩をすくめた。
まぁ、当たらずとも遠からず、ってとこだけど。
答えを濁す僕に事情を察したのか、単に興味を失ったのか、「まぁいいや」と、貴志はあっさり体を引いた。
「お前にはいろいろ世話になったし、できるだけのことはやってやるさ」
「ありがとう。助かる」
ホッと息を吐いて、グラスを持ち上げ。
貴志の手の中のグラスへ軽くぶつけた。
「……そういえば」
中身を一気に飲み干した貴志が、切れ長の瞳をふと思い出したようにこちらへ向けた。
「お前の話聞いてて思い出したんだけど、先週本社に顔出した時にさ、気になる噂を聞いたんだ」
「気になる……噂?」
「総帥が、ついに後継者を決めたらしいって」
「後継者?」
ドキリとした。
飛鳥の話によると、ニセモノは僕が後継者になると言っていたらしい。
もし総帥が、本気でそんなことを考えているのであれば――
「もしかしたらその噂が、今回の件の引き金になったのかもしれないな。何しろ、その噂の後継者っていうのは、――……」