ヴァンパイアRose
いや、本当に何にもありませんよ…。



「お前ら、こんなところで何やってんだ?」



すると後ろからアレクさんが現れた。



「あ、アレクさん!



ほら、みなさん揃いましたし食べましょう!!」



私は必死で話をそらそうとカイラさんの背中を押してダイニングへ向かう。



と言っても、隣にカイラさんがいるとなると…



席はアレクさん、私、カイラさん、クロウさん、ナツメさんよ順になっている。



私は緊張したまんま食べる。



「ところで、アレクは樹里ちゃんのことどう思ってるの?



ほら、あの部屋に止めてるんだし」



「別に、それにあの部屋だからってこいつを縛り付ける気はない。」



そう言ってアレクさんはご飯を食べる。



アレクさんの優しさが伝わり、少し嬉しい。



でも、私には恋愛とか向いてないからいいんだけどね。



それに、私はこの世界の人間じゃないから。



いつか帰ることになるかもしれない、だから大切な人とか作っちゃいけない。



そんな気がする。



「そうなんだ、なら問題ないね〜。



よかったね、クロウ。」



そう言ってカイラさんはニカッと笑う。



今日のカイラさん、いつもと違って少しイジワルというかなんというか…からかってくる。



カイラさんの発言に対し、クロウさんがむせたように咳をする。



「なんの話だ!」



「クロウ、あの女嫌いのクロウが樹里を好きなのか!?」



アレクさんに対しては相変わらず、そこ!?と突っ込みたくなる。



とは言っても、自分の話だから恥ずかしい。



「女の子が来ただけで華やかになったし、クロウの女嫌いも治ったみたいだね、まさに一石二鳥!」



か、カイラさん…。



「カイラさん、そんなに喋ってばかりだと冷めちゃいますよ?」



いつものカイラさんなら、ニコニコ笑いながら静かに食事をしているのに、今日のカイラさんは何か違う。



私がそう言うと、「仕方ないなー」と言って食事をとる。



「あ、アレクさん、この間の小説読み終わりましたよ。すっごく面白かったです!主人公の遼花さんの気持ちすごく共感できましたし、きゅんきゅんしました!」



「そ、そうか。



それは良かった。」



アレクさんは少し恥ずかしそうに顔を隠す。



「あんた、アレクの本読んだんだね。」



ナツメさんが少し興味ありそうに話しかける。



「はい、この間本屋さんで見つけたので。



すごく面白いですよ!よかったらナツメさんも読みます??」



しかしナツメさんは



「別に興味ない、それじゃ。」



そう言ってすぐに食べ終え席を立つ。



少食なんだな。



「ん?ナツメ、学校か??」



アレクさんはナツメさんの方を見て尋ねる。



「うん、行ってきます。」



学校?



この世界にも一応あるのだろうか。



あるなら、やっぱりナツメさんは同じぐらいの歳だろう。



「僕は今日は夕方からだし、のんびり過ごそうかな。」



そう言ってカイラさんは紅茶を飲む。



「カイラさんもどこか行ってるんですか?」



「うん。一応、ね。」



そう言って窓の外を眺めている。



「俺はもう卒業したからな。」



「俺は大学部にたまに顔を出すぐらいだな。」



アレクさんは懐かしいとでも言いたげな表情だ。



それより、クロウさんのたまに顔を出すぐらいとは……。



私は気になり、クロウさんを見つめていると



「クロウは頭がいいからね、だから先生からもお許しをもらってるんだよ。」



カイラさんがすぐさま説明をしてくれた。



頭がいいんだ、でもまぁ見た目からしてそんな感じはする。



ということは、カイラさん、ナツメさん、クロウさんが今行っている、ということだろう。



「樹里も行くか?



手続きさえすればお前も行けるが??」



思いもよらぬアレクさんの言葉に私は息を飲む。



私も行ってみたいとは思うけど、私のいた世界では引きこもりだったのだから、行けるわけがない。



行ったところできっとまた引きこもり生活が始まってしまうのだろう。



「…わ、私はいいですよ、そんな…。」



「…行った方がいいんじゃない?



ほら、わかんないこと多いみたいだし、勉強ぐらいはした方がいいと思うし。」



カイラさんがいきなりそんなことを言い出した。



確かにそうだ。



「僕とクロウは大学部だけど、ナツメと同じ高等部でいいんじゃない?」



「……も、もしいいのでしたら、行ってみたい…です。」



不安だけど、やり直したいと思うし、ナツメさんのラブレターの主も気になる。



「よし、なら明日からお前も行くか。



手続きは俺に任せろ。」



そう言ってアレクさんは勢いよく立ち上がり、階段を上っていく。



明日から!?



いきなりなのは驚くけど、もうなれた気がした。



この世界に来てから、私は少しずつ変わっている。



そんな風に感じてくる。



アレクさんやクロウさん、カイラさんやナツメさん、それにクロエちゃん。



いまなら大丈夫かもしれない、なんの保証もないけど、そんな風に思えてくる。



きっと私がこの世界に来たのには理由があるんだろう。



なんて、なに回想しているんだろう私。



その間にもうクロウさんは食べ終わったようで、ダイニングから出るところだった。



「ごちそうさまでした」



私も食べ終わり、立ち上がる。



ナツメさんが学校に行ってしまったから、片付けは私がやらないと。



「樹里ちゃん一人でだと大変だと思うから僕も手伝うよ。」



そう言ってカイラさんは私のところに来てくれた。



「え、いえ、その私の仕事ですから大丈夫ですよ。」



私は申し訳ないと思いそう行ったけど、カイラさんは



「…樹里ちゃんって、可愛くないね。」



いきなりそんなことを言われた。



か、可愛く…ない?



そりゃ、スタイルは良くないし、顔だってよくない。



「そーゆーときはさ、お願いしますって言ってやらせればいいんだよ。」



カイラさんは真顔でそんなことを言う。



そ、そういうこと?



「で、でも、申し訳ないというか…」



カイラさんは呆れたように頭を抑える。



「ほんっと、樹里ちゃん、可愛くないよ。



ほかの女の子は男子に任せてるのに。」



……そんなの、知らないよ。



「たとえ可愛くなくても、迷惑だけはかけたくないんです!」



「…そう、君は本当に……。」



っっ!?



カイラさんはグイッと私の腕を引っ張り胸に引き寄せる。



トクン、トクン_



カイラさんの心臓の音。



「あ、あの…」



急にこんなことをして一体どうしたのだろう。



「そういう子見てると、嫌でも従わせたくなるんだよね〜」



「カイラ…さん?」



カイラさんはニヤリと静かに笑って私の両腕を掴む。



「大丈夫、クロウもアレクも二階だし、ナツメは学校なんだから、誰も見てないよ。」



そんなことを言ってカイラさんは顔やや近づけてくる。



「あ、あの…。」



私はどうすることもできず、ただただ佇んでいるだけだ。



逃げ出そうにも両腕を掴まれたままだ。



力の差の問題で離させることもできないだろう。



「さーて、困ったお嬢さんだねぇ」



そう言ってカイラさんは私の胸元に手をやる。



「っ!?」



本当にカイラさんなのだろうか、と疑ってしまう。




いつものおっとりとした優しいカイラさんじゃない。



「カイラさんは、そんなこと…しま、せん。」



「君に何がわかるの?



あったばかりの人を…。



勝手に相手のイメージ決めつけてんなよ。」



そう言ってカイラさんは私の身体を壁に押し付ける。



「チッ」



舌打ちをして、ポケットから紐のようなものを取り出す。



も、もしかして…。



ニヤリと笑い、私の両腕を縛る。



そして口にはガムテープを貼られる。



な、なに…これ。



誘拐犯かなにか??



「んんんんっっっ(離してっ)」



「そーゆー顔、大好きだな〜



もっと困らせたくなる。」



そう言って再び私の胸元へ手を伸ばし、プチン、プチンとボタンを外していく。



い、いやっっ!



「んっ」



口もふさがれて、助けを呼ぶこともできない。



「ふふ、なに涙浮かべてんの??



何の問題もないよ。



それとも、ここじゃ嫌?



ベッドの上でもいいけど?」



!?!?!?



ベッドって…



なんとなく想像がついてしまう。



「なら、僕の部屋にくる??



そうだね、そうしよう。



ちゃんと外に声が漏れないようにするし、鍵もしっかりかけるから」



そう言って私はカイラさんに引っ張られ、階段を一歩ずつ上がる。



嫌だ、嫌だ、嫌だ。




カイラさんなの?



本当にこんな人なの??



…パタン。



とうとうカイラさんの部屋についてしまった。



ガチャッ



鍵もかけられ、完全に逃げ場がない。




「さて、続きを始めますか?」



そう言って私をベッドまで連れて行き、そのまま押し倒す。



「んっ」



「心配することないって言ったでしょ?



それに、こんなことみんなやるよ。」



そのまま私はカイラさんの思うがままにされるのだろうか。



プチン、プチンこのままでは完全にボタンが全て外されてしまう。



とは言ってももう上半身はとれて、下着は丸見えだ。



「ガムテープ、邪魔だね。」



そう言ってカイラさんは私の口についたガムテープを外す。



「…っぷは、離して、今すっ…」



私が言い終わらないうちにカイラさんは強引に私に口付けをする。



「!?」



……最悪。



最悪最悪最悪最悪最悪最悪最悪最悪最悪最悪



「…な、なんで、なんでこんなことするの?」



泣きそうになってしまう、いや、このまま泣いてしまいたい。



「言ったでしょ、従わせたくなるって…



お前は俺のオモチャだ。」



オモチャ?



なにそれ、ひどい…。



カイラさんを優しいと思っていた私をぶん殴りたい。



「だから、いいでしょ、君は僕に従うしか道はないんだよ?」



…もう、どうしようもないのだろうか。



「ご主人様には従わないとね、子犬ちゃん」



…!?



そう言ってあちこちにキスをする。



「やっ」



私は、彼の欲求不満を満たすためのオモチャということになってしまうの??



嫌だよ、今すぐこの屋敷から出たい。



アレクさん、クロウさん、ナツメさん……



誰か…



………助けて。
















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