『少年時代』
『昭和の夏もよう』
海彦神社の境内にいよいよ露店が立ったらしい。

学校の帰り道、仲間から今年の夏祭りの話を聞かされた康晴は、それでもう浮かれてしまう。


「ほいで、ほいで、どんな店があったんだよお?」


「金魚すくいにい、たこやきにい、わたアメにい、イカ焼きにい、カキ氷? ああ、でっかいプラモやらゲームが当たるくじ引きもあったぞ」


ほいで? ほいで? ほいで?

明日、神社から神輿が出て海辺の神事がすべて終わると、いよいよ海開きである。夜には沖島から花火も上がる。

その話を聞いただけで、康晴の頭の中にはもう大輪の花火が咲き乱れるのだ。

子供らは皆、なんだか胸がワクワクして、心がソワソワして、じっとしていられない気持ちになるのだ。

しかしとりあえずはいつもの駄菓子屋に寄り道して水あめを買い、それを頬張りながら明日の作戦を立てる。

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