最上階ロマンス
鼻先数センチの所にあった…琢磨の顔…。。実咲は、一瞬にして硬直する…

「あ。。」
《キスされる…!》

きゅ…っと、瞼を閉じた…


が。。


その次の瞬間、鼻先を摘まれ…息が出来ない…

「早く、支度しろ…」

急な行動に、心臓が止まりそうになった…。。その後、すぐ様離された…

瞼を開けた…実咲。。目の前の琢磨と視線がぶつかった…

その次の瞬間、その唇が重なった…

「……っ」
《…え…?》

すぐ様、離された唇に…、動揺を隠せない…

「支度したら、来て…。朝ごはん、用意する…」

そぅ…、何事もなかったかのような…琢磨の態度…

琢磨は、踵を返す…と。。寝室を出て行った…

その直前…に、実咲の方を振り返ると…

「あ。。それと…」

琢磨の声に、実咲はその声が聞こえた方に、視線を向けた…

「お前、俺に惚れるなよ! めんどくさいから…っ!」

「…は…っ?」

その琢磨の勝ち誇ったかのような笑み…

実咲は、その言葉に…呆気に取られる…。。その表情に琢磨は、急に笑い声を上げ…

「お前、からかいがいがあるな~」

と、そう言い残し…、ドアを閉めた琢磨…

その、背を見送りながら…。。先程のコトを頭の中で反芻する…

「……え…と。。」
《いま! キス…された~!!

それに…【惚れるな】って~!

誰が…っ!》

が、少しすつ…頭の中が冷静さを取り戻してきた…

「っ何なのよ? 惚れるワケ…」
《…ないじゃない…っ!

あんなこと、する人に…っ》

と、軽くパニックを起こしている実咲は、琢磨の真意が分からない…


が。。相変わらず…胸の高鳴りは押さえられない…

「……っ」
《こんなの、毎日…続くの…?

こんなの…、

好きになったら……?》


学生時代に、ずっと…、見ているだけ…の人だった。。その相手からのキス…

動揺しない方が可笑しい…


✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼


身支度を整え、ダイニングルームに向かう…と、テーブルの上に置かれた食事。。

昨夜、実咲が作ったポトフと焼きたてのトーストとスクランブルエッグ…サラダまで並べられていた…

それらの朝食の用意の手際の良さ…に目を丸くさせ…

「これ、漆原くんが作ったの?」
《朝から、これだけ用意しちゃうなんて…》

琢磨は、先に席につき、そぅ言う実咲に視線を上げる…

「俺、一人暮らし長いから…。て、お前程でもないか…」

「そっか…」
《…にしても、朝から…豪華すぎでしょ?

て、スープは昨日の残りだけど。。》

実咲は、琢磨の目の前の席に腰を下ろした。。その動作、一つ一つ…を見つめている琢磨が…

「…呼び方、どうにかならない?」

「え?」

焼きたてのトーストにジャムを塗ろうとした実咲の手が止まる…

「仮にも、【夫婦】だから!
【漆原くん】じゃないんじゃないの?」

そぅ、言われ…。。【確かに、そうだゎ】と、納得した…

「なんて、呼べば?」

「ソレ、俺が考えるの? 普通、付き合ってる恋人同士が名前、呼び合う前にお互いに確認するか?」

その言葉に、返す言葉もない…

「そっか…」
《なんて、呼べばいいのよ~!

下の名前? いゃいゃ、恥ずかしすぎる…っ!

じゃ、結婚してるフリ?だから、【あなた】とか?

いゃ~! もっと、ムリっ!》


「…実咲…で、いっか。俺の場合は…」

そぅ…、何気なく…名を呼ばれただけで…微かに胸の鼓動が速さを増した…

「料理、出来る女で助かった…。あぁ言った手前…全く出来なかったら、雇う価値もなかったし…」

「……」
《あぁ、そぅか…。。

【偽装結婚】の契約…だもんな。

なに、名前…呼ばれたくらいで…ドキドキしてるの…?


でも……、なんなの? これ…》


そぅ、一瞬、思い浮かんだ言葉に、すぐさま我に返る…

「……っ!」
《いゃ…、いやいや…っ!

ないない…っ! 私は、もぅ、男の人を信じたりしないんだから…っ!》






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