恋愛境界線
「では、私は失礼しま…」

「あなたは、その女子生徒の一人じゃないの?」

まだ、会話を続ける気かな。
逃げられそうもない。

「私は、本郷先生みたいなタイプは好みではないので、心配しなくても大丈夫ですよ」

小川先生と2人きり。
微妙な空気が流れる。

「…嘘つき」

「え?」

「付き合ってたんでしょう」


小川先生からの思わぬ言葉に、私は喉を詰まらせる。
なんで、小川先生がそんなことを知っているの?

「…なんのお話でしょうか」

「とぼけないで。私、知ってるのよ」

まさか先生が小川先生に言った?
…まあ、今の彼女である小川先生に言っていてもおかしくはないか。

「…本郷先生がそう言ったのかもしれませんが、私と本郷先生はもう関係ありません。今はただの“教師と生徒”です。心配しなくても大丈夫ですよ」

本当に、私たちはもう何の関係もない。
小川先生という新しい彼女ができたんなら、むしろ、今度こそ…幸せになってほしい。

3年前、“優姫(ゆうひ)さん”という婚約者を亡くして、人生に絶望して、
1年前に私に出会って、すぐ別れて。
私は、先生の兄である隼人さんと付き合いはじめて。

本郷先生は、ずっと幸せになれない3年間だっただろう。

私とはうまくいかなかったけれど、小川先生と…幸せになってくれたら。

「小川先生と付き合いはじめたなら、良かったです。私が言うことじゃないですけれど、幸せに…」



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