恋愛境界線

やっと両想いになって、
正式に付き合えると思っていたのに。

先生が去っていった方向を見つめて、私は涙を流す。


いま考えると色んなことの辻褄が合う。


初めて出会った社会科準備室で私を見た瞬間、先生が驚いた顔をしたこと。

あれは寝ぼけていたのもあって、私を別れた彼女が目の前に立っていると勘違いしたんだろう。


だから私を抱き締めて、キスをした。
キスする前に先生が何か呟いたのは、おそらく彼女の名前だろう。


私のことを見て、たまに哀しそうな寂しい表情|《かお》をするのは、私をその彼女に重ねているから。





私を好きなわけじゃない。


それを知ったまま、付き合っていくなんて無理だ…無理だよ。
もう、どうしたらいいかわからない…




私は鞄から携帯を取りだし、ぼーっとしたまま"彼"の番号を表示させ、通話ボタンを押す。

最低なことをしたのに、いざというときに頼れるのは"彼"しかいないなんて。

私ってひどい女よね。
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