恋愛境界線
『もしもし?』

つい1週間前に会ったばかりなのに、その声が何年も聞いていないかのように懐かしく感じる。

「かなで…」


奏の声を聞いて、ずっと不安だった気持ちが和らぐ。
安心して余計に涙が溢れてくる。


『雪花か?…どうした?泣いてるのか?』


「電話してごめん…本当にごめんね」


『そんなの全然いいから。それよりも何があったんだ?先生と何かあった?』


奏は本当に優しすぎるよ。
結局その優しさに甘えてしまう私がいる。



「奏…いまからそっちにいっていい?」


『今からか?今からこっちに来たら…帰りの電車がなくて帰れなくなるぞ。いいのか?』


「いいの。もうどうなってもいい…」


ここから離れたい。
いまは先生のことを考えたくない…


『…わかった、待ってる。最寄駅に着いたら電話して。駅まで迎えに行く』


奏は少し間をおいてからそう返事をしてくれた。

「うん、ありがとう」


そう言って電話を切る。





ここから離れた場所に行きたい。

私はふらふらと立ちあがり、駅の改札へと歩き始めた。


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