Starlight
「ごめんね、俺のせいで…」

記憶の中の男の子と田島くんが重なる。

「ある日の帰り道、

みんなから遅れた俺に向かって

トラックが突っ込んで来たんだ。

もうダメだと思った瞬間、

あいが俺を庇ってくれた。」

かすかに蘇る記憶。

「あいちゃん、いやだ、いやだよ

お願い!死なないで!」

男の子が私を抱き抱えながら

何度も私の名前を呼ぶ。


怖くなり、とっさに田島くんに抱きついた。

そのままゆっくりと田島くんがわたしを抱きしめる。

「ずっと嫌われたんだと思ってた。

俺のこと嫌いになったから

全部忘れちゃったんだって。」

そう言うと抱きしめる力が強くなる。

「そんなことないよ。

まーくんが大好きだったから

誰よりも大切だったから

助けたんだよ。

まーくんがいなくなるのが嫌だったから。」

ゆっくりと鮮明に記憶が蘇ってくる。

田島くんの顔を見上げる。

まーくんだ。

高校で見た目は変わったけど

中身は何にも変わってない。

あの頃の泣き虫なまーくんだ。

「今までずっとごめん。

思い出せなくてごめん。」

「まーくん」

私が呼んだ瞬間、田島くんは

私が全て思い出したと分かったようだ。

「がっかりした?

こんなのがまーくんで。

ずっと好きだった初恋のまーくんとは

程遠いだろ?」


「そんなことない。

気がついたら私、田島くんのこと好きになってた。」

「こんな俺でも、まだ好きでいてくれるの?」

「うん。

大好きだよ。

昔も今も。」


まーくんが私の頭を優しく撫でる。

「じゃあ、これからはずっと一緒にいよう。

もう絶対に離れないから。」

真っ直ぐに私を見る。

「俺と付き合ってください。」

迷いなんかない。

やっと見つけた。

ずっと会いたかった。

真っ直ぐにまーくんを見つめ返す。


「はい。」


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