教えて、世界。【短編】
振り向くとーーー

「鈴原…?」

本当に?

本当なのか?

「幽霊みたいにみないでよ。」

「いや…だって、なんでここに?ここは誰もーーー」

「ああ、ここね。知ってた?この場所って僕の場所でもあるんだよ。よく来てた一人で。篠崎くんと仲良くなる前まではね。てかそろそろ名前呼びしてもいい頃じゃね?僕たち結構、仲良しじゃん。」

「な、名前呼び…ああ…そうだ、な。」

言いたい事はいっぱいある。

聞きたいこともいっぱいある。

なのに、なのに、

出てくるのは涙と溢れんばかりの音楽が僕の胸に耳に鳴り響く。

「誓《ちかい》、ただいま。」

「お、おかえり、け、健二郎。」

「これ、男女だときっとキスだな。」

そう言いながら唇を付き出す真似をする。

どこまでもふざけやがって。

「男同士でもしてやるよっ!」

僕は半ばやけくそで健二郎のほっぺにキスをした。

そして思い切りハグをする。

「ま、マジかよ…勘弁してよ。僕、そんな趣味ないし。」

そう言いながらも払い退けようともしない。

「うるせー、僕にもそんな趣味あるか。でも…」

「でも?」

「親愛だよ。親愛の意味を込めて、だって僕達…と、友ーー」

「じゃねぇーよ。」

「ええっ?」

友達じゃないの?僕だけ?一人舞い上がってた?

「バカ、最後まで聞いてよ。僕達はーーー親友だろが。」

そう言いながらイタズラっ子の様に笑う健二郎の笑顔があの時の悲しげな横顔を上書きする。

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