初恋の花が咲くころ
仕事一筋になる!
もうこの会社に入社してから、どれくらい経ったのか、自分でも分からない。
とにかく、仕事中だけは余計なことを考えなくて済む。自分のタスクにだけ集中して取り組んでいたため、仕事の腕だけはめきめきと成長していった。
お昼休憩に行くと、あやめと編集長が一緒にランチを食べているのが目に入った。今や本当に両想いになった二人だが、お似合いなのはずっと前から分かっていたことだ。でもあの二人が一緒にいるのを見るのが、辛くて、幾度となく泣きそうになる。そこへ、なぜかいつもいいタイミングで来る棗が「あの美男美女カップル、社内でも有名だぜ」なんて、傷に塩を塗るまねをしてくるから、咲の傷が癒えることはなかった。
そんな今日も例外ではなく、「本当お似合いだよな~。あやめ姐さん、意外と面食いなのな」と言いながら、目の前に棗が座ってくる。
咲は自分のオムライスから目を離さずに、言った。
「なんで、そこに座るの?」
「えーいいじゃん」
そして、オムライスのオマケとして付いているタコさんウィンナーを手で横取りした。
「あ!それ!」
「もーらい!」
棗が咲には手の届かないところに待って行き、口に入れた。
「こいつ…」
どうしてこいつは、私の従弟なんだろう。冗談じゃない。
「食欲失せた」
そう言って咲は席を立った。
「あ、怒った?」
そのあとも付いて回る棗が憎らしくて仕方がないが、ここは会社だ。大声では騒げない。
今度家に来たら、一発殴ってやる。そう心に決心しながら、咲は仕事へと戻った。
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