行き着く先は・・・甘い貴方の檻の中?
「さくらに足りないものは、女子力、言わば、恋愛力だと思うよ」

「あんたが言う?」

「私はいいの。2次元の嫁(推し)がいるから。でもさくらはいいの?このままだとお祖父さんやお父さんに政略結婚させられちゃうんじゃないのかな」

そう言う桃子は、生粋のオタクだ。

オタクといっても、コスプレイヤーをも兼ねる強者なのだが、それにかける情熱こそが"triple birth union"の未来を構築しているといっても過言ではない。

「俺もそう思うぞ」

そう言って話に割り込んできたのは、
肩書きは"triple birth union"の社長である
新山拓海、28歳だった。

拓海は、同じ小学校の幼なじみかつ、さくらの大学の先輩。

システム工学研究会なるサークルで再会した。

こちらも生粋のITオタク。

ゲームだけでなく、様々なアプリの開発を行っている。

彼の天才的な頭脳が、会社のブレインとして機能するからこそ、ここまで会社が発展してきたと言えよう。

「実家を継ぐまで後1年、さくらが恋愛したってバチは当たらないんじゃないのか」

そう言う拓海は確かにモテる。

それは、それは引く手数多で、とっかえひっかえ・・・。

呆れた視線を拓海に向けながら

「そんなん、やれるもんならとっくにやってるつうの」

と、さくらはまたも溜め息をついた。

さくらに言い寄ってくるのはどちらかと言うと女の子が多かった。

恋人というよりも"お姉様"的な?

男性はというと、西園寺家の跡取り娘のお相手となる程、自信がある者は少なく、いたとしても、自信過剰なチャラ男かマザコンか・・・。

いくら、恋愛初心者のさくらとはいえ、選ぶ権利はある。

まあ、そう言うわけで、これまで彼氏という存在は現れずに現在に至る。

「俺が相手してやっても・・・」

「結構よ!」

拓海の抱擁をうまく交わしてさくらは飛び退く。

仕事にうつつを抜かして色恋沙汰と無縁に生きてきた。

「ああ、なんか面白いことないかなー」

さくらは窓から遠くに見えるハイタワーを見ながら、本日何度目かの溜め息をつくのだった。



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