行き着く先は・・・甘い貴方の檻の中?
撮影中、波留斗が預かっていたさくらのリュックの中でスマホのバイブが作動した。

波留斗はさくらのスマホを取り出すと、表示されている先方の名前を確認した。

さくらからは、SNSのメッセージや電話の着信なら波留斗が対応してもよいと言われている。

「・・・はい」

「・・君は誰だ?」

男性の声。

スマホの表示には、西園寺護。

そう、それは、西園寺コーポレーションの現社長、さくらの父だった。

「失礼いたしました。私は南條波留斗と申します。申し訳ありませんが、現在立て込んでおりまして、折り返し連絡を差し上げても?」

ここには人目がありすぎる。

゛さくら゛という一人称も゛彼女゛という二人称も使えない。

護が怪訝に思おうが、そこは譲れない。

急いで控え室まで移動したものの、壁に耳あり、だ。

どこで何を部外者に聞かれるとも限らない。

「まあ、いいだろう。あいつにも都合があるからな。ところで今夜は何か用事がありそうか?」

初めて話しているはずの波留斗にも不躾な口調を崩さないのは、天性のカリスマか、暴君か?

「いえ、撮影が終われば何も予定はなかったと思います」

「わかった。話があると伝えてくれ。実家に顔を出せと言えばわかる。それと君も一緒に来るようにな」

「・・・はい。承知致しました」

波留斗は護が会話を終了させるのを確認して、スマホをフリックしため息をついた。

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